SHORT INTERVIEW

“食べる”“話す”を支える、訪問ST(言語聴覚士)の仕事

  • No.72018年5月31日発行
国家資格のリハビリ3職種、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)。中でもSTはまだまだ認知度の低い職種である。一方で、特に在宅のSTには、地域ケアの担い手としての期待が高まっている。今回は、東京・新宿で訪問STとして活躍する佐藤亜沙美さんに、なぜ在宅の道を選んだのかを聞く。

左:佐藤 亜沙美さん
訪問看護ステーション「リカバリー」言語聴覚士
右:加藤 桂示 ATTENTION代表
写真:吉住 佳都子

●STになろうと思ったきっかけは?

「中学生の頃、脳出血で入院した親戚の人がいて、当時はまったく言語訓練を受けずに退院。自宅に戻っても、失語症により家族とコミュニケーションが取れず、みんなストレスが溜まっていくのが目に見えてわかりました。住んでいた地域にはその頃STがいなかったので」

普段から話をしていた人が突然言葉を失った。ショックを受けたのと同時にどうにかしてあげたいという強い気持ちを抱いた。STという仕事があることを知り、やがてそれが志に変わっていった。

●どうして、訪問STになったのか?

「初めは急性期病院に勤めていて、日々医師の依頼でリハビリをしていました。でも、回復して退院しても、また嚥下障害で戻ってくるという人が多かったのです。その頃は、何が問題なのかわかりませんでした。家族指導をしても意外と理解されていなくて、これは在宅にもSTが必要なのではないかと思ったのです」

訪問STは、病院と家族やヘルパーとのつなぎ役にもなる。嚥下や発声の訓練をするだけはなく、食形態の見極めなども行う。つまり、患者が日常生活に困らないように環境設定をしてあげることも訪問STの仕事なのだ。

●これからどんな取り組みをしていきたいか?

「“食べる”“話す”って、人生においてもっとも重要な楽しみですよね。それを支援するのがSTなのですが、特に在宅のSTをもっと知ってもらいたい。広めたい。そのための活動をしていきたいですね」

“食べる”“話す”とは、生活の基本である。超高齢社会のクオリティ・オブ・ライフを支えるのは、実はこういった仕事なのだろう。住み慣れたわが家でいつまでも安心して暮らしてほしい。「在宅のSTをもっと知ってほしい」という言葉には、そんな想いが込められている。