医介塾特集 Special Report

地域包括ケアを支える 1000人の「仲間」
一般社団法人医介設立記念大会 〜医介塾総会〜

  • No.22017年1月21日発行

「医介塾」をご存じだろうか。2012年に始まった100人程度の医療・介護に関わる多職種の交流会が、たった5年で全国23か所、毎月の参加者は1000人に達する規模になった。
2016年11月26日、東京・六本木で開かれた「医介塾総会」の模様をお伝えしたい。
(於・ハリウッド大学院大学講堂)

顔の見える多職種連携で、ケアのパフォーマンスを上げる

 

開場時刻になると、会場は一気に熱気に包まれた。全国各地から次々と到着する参加者は、総勢300名以上。用意した席がみるみる埋まっていく。遠路、札幌や熊本から足を運んだ参加者もいる。会場のあちらこちらで知人の顔を見つけては笑顔が交わされている。

医介塾は代表の猪飼大(いかい はじめ)さんが2012年に東京都大田区で始めた医療・介護の多職種交流会だ。現在は東京都区内をはじめ首都圏各地、札幌、静岡、大阪、広島、熊本、沖縄にも広がっている。「塾長」と呼ばれる各地の世話人が、それぞれの地域で会の運営に当たっている。日常業務を担いながら医介塾の運営にあたる塾長の負担を軽減するため、2016年に一般社団法人医介が設立され、運営事務をサポートすることになった。

猪飼大さんは、冒頭、代表挨拶で舞台に立ち、診療所の事務長として訪問診療に関わるようになって横のつながりの必要性を感じ、医介塾の前身である「医療介護交流会」を始めたといういきさつを紹介。「互いに顔の見える関係で多職種連携ができると、ケアのパフォーマンスが上がり、利用者の満足度も上がる。よく『医介塾を作った目的は何か?』と訊かれるが、大きな目的はなく、『医介塾に来てよかった、仲間が増えた』と言ってもらえることだけが目的だ」と語った。

後半には特別講演として慶應義塾大学名誉教授の田中滋さんが登壇。田中さんは医療・介護・地域包括ケアの分野で、制度設計の中心的な役割を担う政策論の第一人者として、多くの業績を上げている。その田中さんは、これからの地域包括ケアの概念について「自助、互助、共助、公助を組み合わせて地域社会をどうつくるかの話。残存能力を活かして孫と遊び、犬の散歩や囲碁クラブへ行き、杖をついていても美術館に行くといった生活支援を含めた街をどうやってつくるか」と説明。また、介護予防は高齢者自身の責任であること、福祉は家族ではなく本人が選択すべきものであること、多くの利用者に慢性疾患があるので、再発防止のため介護職も疾病管理の知識をもつことが大切であることなど、これからの地域包括ケアに携わる上での基本的な心構えを熱く語った。

全員参加の写真撮影、そして懇親会と、主催者と参加者が一つになり、会場は終始熱く若々しい雰囲気に包まれた。地域包括ケアを支える全国の1000人の”仲間“たちに、明るい未来を感じる一日だった。
(取材・文/中保 裕子 写真/吉住 佳都子)

●開会の挨拶

医介塾代表
猪飼 大さん

「この総会で仲間がたくさんいることを改めて実感した。今後も『来てよかった』と言ってもらえる医介塾をもっと増やしていきたい」


●来賓挨拶

ハリウッド大学院大学
学長
山中 祥弘さん

「高齢化時代におけるハッピーライフを実現するため、ぜひ美容も仲間に入れていただきたい」


医療法人社団至髙会
理事長
髙瀬 義昌さん

「医療と介護とは顔の見える関係であってほしい。医介塾はよい活動だと思う」


大田区
福祉部長
中原 賢一さん

「人のつながりは地域の財産。どんどん人の輪がつながっていくことに期待したい。ぜひ地域の行政とも情報共有を」


●特別講演

慶應義塾大学 名誉教授
田中 滋さん

「都市部の地域包括ケアシステムを考える」をテーマに講演。「共助の力は連携の力。医介塾にはそれを高めていこうという志がある」


●医介塾メンバーより

葛飾医介塾 塾長
武田 訓明さん(医療ソーシャルワーカー)

「相手の顔が見えると在宅復帰支援で信頼できる事業所を紹介でき、患者紹介のミスマッチがなくなる」


三郷医介塾 塾長
髙橋 公一さん(訪問診療医)

「現場が最高の教科書。各施設の長所を紹介して地域全体の底上げを図りたい」


足立医介塾 塾長
片岡 陽さん(介護福祉士・介護支援専門員)写真左
北区医介塾 塾長
張原 正義さん(訪問鍼灸・マッサージ治療院)写真右

「1日200回のナースコールがある利用者を多職種連携でケアを厚くしたところ、穏やかに過ごせるようになった事例がある。日々、自分たちが正しいことをやっているのか悩むこともあるが、志の高いメンバーがそろえば何でもできる」


一般社団法人医介 理事
池川 裕子さん(訪問歯科医師)

「顔の見える関係づくりでよりよい社会を作っていけたらと思う。口腔清掃をしっかり行うと予後がよいので、介護職もぜひ協力を」


一般社団法人医介 代表理事
柳田 頼人さん

「本音で話せる関係が信頼の原点であり、それで初めて人というものを学ぶことができる。医介塾は人を学ぶ場所」


●懇親会

懇親会では、各地区の塾長・副塾長のスピーチタイムに盛り上がる。開会挨拶では緊張していた猪飼さんの表情もほころぶ