地域包括ケア最前線

余白がつくる引き寄せの効果 「まるごとケアの家いわみざわ」

  • No.42017年8月25日発行

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地域をまるごとケアする

スタッフも地域の人である。地域で育った子供が看護師となり地域に貢献している。事務長の博田彩奈さんは事務局長の山田さんの娘であり、親子で「ささえるさん」を切り盛りしている。もともとの親友同士がスタッフとして一緒に働いている。みんな地域の人である。「まるごとケアの家いわみざわ」は、地域の人がやりたいと言ってつくった場所である。だから、地域の人であるスタッフも自分の子供を連れてくる。

「地域の真ん中にボンと施設を建てて地域とつながろうとする、よくあるそうしたコミュニティづくりとはそこが決定的に違うのです」と永森さん。

永森さんは「ささえる医療研究所」の前理事長である村上智彦さんの盟友として、ともに事業を運営してきた。村上さんは今年の5月、がんとの闘病の末、逝去された。村上さんの、永森さんの、そして二人とつながる仲間たちの地域ケアの志は、「まちづくり」として発展していく。「まるごとケアの家」はその象徴でもある。二人がスタッフの地元採用にこだわったのもここにあらわれている。

「まるごとケアの家」とは地域ケアの概念である。そして、岩見沢の地で一つのカタチになった。「余白」をつけることでコミュニティスペースができる。これは「まるごとケアの家」の岩見沢バージョンである。地元でやりたい、地元に貢献したいという訪問看護師の一つの開業パターンとしての提案でもある。「例えば2DKの部屋があれば、一つの部屋で訪問看護ステーション、もう一部屋には訪問介護の事業所を入れてもいい」と永森さんは言う。そんなふうに、「余白」には他の何かを引き寄せる力がある。働く人も住民も、高齢者も子供も、地域をまるごと引き寄せてケアする。

今や10人に1人が医療介護の従事者であると永森さんは言う。おまけに全国に空き家はたくさんある。数年後の日本には「まるごとケアの家」が各地に展開されていても不思議ではない。現行の制度にとらわれず小さく始めることのできる事業だからだ。そして、「地域愛」という普遍性がそれをささえていく。

今では「ささえるさん」が管理する1万坪の農園にあるログハウス。
ここの管理人になることは村上智彦さんの夢であった

取材協力/
医療法人社団ささえる医療研究所
〒068-0833 北海道岩見沢市志文町162番地26
TEL:0126-35-7088 FAX:0126-35-6877

*1「マギーズ東京」は、がん患者とその家族、友人が「自分の力を取り戻す」居場所。英国発祥の「マギーズがんケアリングセンター」の日本第1号として、2016年10月に東京・豊洲にオープンした(ATTENTION No.2参照)

*2「かあさんの家」は、住み慣れた地域、家にできるだけ近い環境で過ごしてもらいたいという想いで「NPO法人ホームホスピス宮崎」が立ち上げたケアハウス。現在、看護師・介護福祉士などの専門職が24時間常駐し、ボランティアや地域の人たちの支援を受けて運営されている

*3 同じ想いでゆるくつながった医療と介護の仲間たちが全国から集まり、語り合い、思い出に残る時間を過ごす。富山県砺波市の「ものがたり診療所」の佐藤伸彦氏が主宰する「遊びあり、遊びあり、そしてゆる〜く勉強」という合宿

世界一の少子高齢社会で地域が生き残るための希望の書

SOMPO ケアメッセージ株式会社 介護支援専門員 介護福祉士 早川 伸夫

最強の地域医療(ベスト新書)村上智彦 著

村上智彦先生は、2000年より北海道瀬棚町で、肺炎球菌ワクチンの公費助成など予防医療に取り組み、高齢者医療費を劇的に削減。2006年より、財政破綻した夕張市で閉鎖された市立病院を引き継ぎ、様々な既得権と戦いながら、夕張の地域医療再生に尽力。2009年に地域医療への貢献が評価され、第18回若月賞を受賞。2013年に医療法人ささえる医療研究所「ささえるクリニック」を立ち上
げ、北海道岩見沢を中心に「まちづくり」に取り組んでこられた。2015年12月に急性白血病を発症。闘病中に本著を執筆、本年5月に逝去された。

本著『最強の地域医療』の中で村上先生は、様々な既得権との戦いや闘病患者としての体験から、日本の高齢者医療や地域医療の歪みを鋭く指摘し、新たな地域医療や少子高齢社会における「まちづくり」を提言されている。本著には、「私はバカはバカでも、『理念バカ』」とおっしゃる村上先生の生き様と、村上先生をささえる地元スタッフや全国の同志とのゆるいつながり、そして地域住民主体の「まちづくり」のノウハウが詰まっている。

私自身も、村上先生の著書にささえられてきた一人だ。日本の大きな歪みと戦ってきた村上先生の姿に、何度勇気をいただいたことだろう。今年4月にお会いする機会に恵まれ、その時先生からいただいた「間違っていないよ。本音で行きなさい」という最強の激励は、私にとって生涯の宝である。

本著は、「世界一の少子高齢社会である日本」で地域が生き残っていくための希望の書である。一人でも多くの人が本著を読み、本気の地域住民として「まちづくり」を考え行動していくことを願いたい。